BMW HP4とS1000RRは、どちらも高性能なスポーツバイクとして多くのライダーに支持されていますが、具体的に何が違うのか気になる方も多いでしょう。
この2台は、エンジンや基本スペックこそ似ているものの、トラック志向のHP4と、公道でも使いやすいS1000RRでは、その性能や装備に大きな違いがあります。
本記事では、BMW HP4とS1000RRの違いをそれぞれのスペックや電子サス、価格、年式ごとの特徴を比較しながら解説します。どちらを選ぶべきか迷っている方のために、選び方のポイントも紹介していきます。
BMW HP4 S1000RR 違いを徹底比較

HP4とS1000RRの基本スペック比較
BMW HP4とS1000RRの大きな違いの一つは、その基本スペックにあります。HP4は、S1000RRをベースにして開発されており、両者のエンジンは999ccの直列4気筒で同じですが、HP4はトラック向けの仕様が強化されています。HP4は軽量化されており、特にホイールとサスペンションにおいて顕著な違いがあります。例えば、HP4は鍛造ホイールを採用し、これによって約2.4kgの軽量化が図られています。また、S1000RRには標準装備されていない電子制御サスペンション(DDC)が、HP4には標準で搭載されています。
一方で、S1000RRは公道走行を重視しており、パワーモードやトラクションコントロールなどの先進技術を備えているものの、HP4ほどの軽量化やトラック専用の装備はありません。しかし、最新のS1000RRでは改良が進み、標準モデルでも十分なパフォーマンスを発揮するようになっています。
Spec | BMW HP4 | BMW S1000RR |
---|---|---|
エンジン | 水冷直列4気筒 DOHC | 水冷直列4気筒 DOHC |
排気量 | 999cc | 999cc |
最大出力 | 193馬力 @ 13,000rpm | 193馬力 @ 13,500rpm |
最大トルク | 112Nm @ 9,750rpm | 113Nm @ 10,500rpm |
車両重量 | 199kg | 204kg |
サスペンション | DDC電子制御サス | 調整式サスペンション |
ホイール | 鍛造アルミホイール | アルミホイール |
電子制御 | DTC, DDC, クイックシフター | DTC, クイックシフター |
最高速度 | 約300km/h | 約299km/h |
HP4とS1000RRの性能に違いはあるのか?
HP4とS1000RRの性能面でも違いが見られます。最大出力は両者ともに193馬力と同じですが、HP4はよりサーキット向けに設計されており、より軽量で高性能なサスペンションを搭載しています。具体的には、HP4にはダイナミック・ダンピング・コントロール(DDC)が採用されており、走行中の路面状況に応じて自動でサスペンションの硬さを調整します。これにより、特に高速コーナリングやブレーキング時の安定性が向上します。
一方、S1000RRは公道でも快適に走行できるように設計されており、パフォーマンスのバランスが取れています。また、最新のS1000RRではエンジンの改良や軽量化が進んでおり、トラック向けではないものの十分に高い性能を持っています。両者の違いは、主に使用する目的によって感じられる部分が大きいです。
電子サスの違いとそのメリット
BMW HP4とS1000RRの大きな違いの一つに、電子制御サスペンション(電子サス)の有無があります。HP4には「ダイナミック・ダンピング・コントロール(DDC)」という電子サスが標準で搭載されています。これは、路面状況や走行モードに応じて自動的にサスペンションの硬さや減衰力を調整し、快適さと性能を両立させるものです。具体的には、雨天や通常走行では柔らかく、トラックやスポーツ走行では硬めに設定されるなど、瞬時に最適な状態に調整されます。これにより、コーナリング時の安定性が大幅に向上し、乗り心地も改善されます。
一方、S1000RRにはこのDDCは搭載されていません。最新モデルには手動調整式のサスペンションが装備されていますが、電子制御ほどの即時性や精密な調整は期待できません。ただし、一般的な公道走行では十分な性能を発揮します。DDCのメリットは主にトラックでの利用が多いライダーにとって大きく、素早く確実なコントロールが可能になる点が魅力です。
HP4とS1000RRの装備を比較
装備面でもHP4とS1000RRにはいくつかの違いがあります。HP4は高性能なトラック走行向けの装備を多数搭載しているのが特徴です。例えば、HP4には標準でクイックシフター、レースABS、ダイナミックトラクションコントロール(DTC)などが装備されており、これらは特にサーキット走行において優れた性能を発揮します。また、軽量な鍛造ホイールやカーボンファイバー製のパーツも特徴的で、S1000RRに比べて約5kgの軽量化がされています。
一方、S1000RRも多くの先進技術を備えており、パワーモードやトラクションコントロールが標準装備されていますが、HP4のようにトラック専用の装備が豊富に搭載されているわけではありません。S1000RRは公道での使用に適したバランスの取れた装備が特徴です。そのため、普段使いとサーキットの両方を楽しみたいライダーにとっては、S1000RRの方が使い勝手が良いと言えるでしょう。
HP4とS1000RRの価格帯の違い
BMW HP4とS1000RRの価格帯には大きな違いがあります。HP4は、S1000RRをベースにしながらも、さらに特化されたトラック向けの装備や軽量化が施されており、より高価格なモデルとして位置づけられています。例えば、HP4の新車価格は約167万円から193万円(コンペティションパッケージ付き)で販売されていましたが、中古市場では依然として高価格で取引されています。一方、S1000RRはより幅広いライダー層に向けて設計されており、価格帯も抑えられています。新車の価格は約150万円から160万円程度で、HP4よりも若干安価です。
中古市場では、HP4の方が希少価値があるため価格が高止まりする傾向がありますが、最新型のS1000RRもその装備や性能から人気が高く、値崩れしにくいという特徴があります。購入を検討する際は、トラック使用を重視する場合はHP4が最適ですが、日常的な使用を含めて考えるならS1000RRがコストパフォーマンスの点で優れていると言えるでしょう。
BMW HP4 S1000RR 違いの年式別の系譜

それぞれのモデル年式の特徴
HP4とS1000RRには、各年式ごとに異なる特徴があります。HP4は2012年から2014年にかけて製造され、その後は限定的な生産のみとなりました。この期間のHP4は、BMW初の電子制御サスペンション(DDC)の導入や軽量化、トラック向けの装備などが大きな特徴でした。さらに、2017年にはカーボンフレームを採用したHP4 RACEが限定販売され、このモデルはさらなる軽量化とトラック性能を追求した特別なモデルです。
一方、S1000RRは2009年に登場して以来、複数の世代にわたって改良が続けられています。特に2015年以降のモデルでは、エンジン性能の向上や電子制御の進化が見られ、トラックと公道の両方で優れたバランスを発揮するモデルへと進化しています。また、最新のS1000RRでは、シフトカム技術が導入され、低回転域から高回転域までスムーズなパワーデリバリーを実現しています。
これらの年式の違いを踏まえると、HP4は短期間の限定生産でトラック特化型、S1000RRは幅広いライダーに対応した進化型モデルとして位置づけられていることがわかります。
HP4とS1000RR、どっちが良い?選び方のポイント
BMW HP4とS1000RRはどちらも高性能なバイクですが、選び方は主にライダーの使用目的によって決まります。HP4は、トラック走行に特化したモデルで、特にレース志向のライダーに向いています。電子制御サスペンション(DDC)や軽量ホイール、クイックシフターなど、サーキットでの性能を最大限に引き出すための装備が充実しているのが特徴です。そのため、サーキット走行をメインに楽しみたい人にはHP4が最適です。
一方で、S1000RRは公道での走行を考慮しつつも、スポーツライディングを楽しむことができるバイクです。最新のモデルでは、シフトカム技術などが導入され、より滑らかな走行性能を実現しています。トラックと公道の両方で使用したいライダーには、S1000RRの方が汎用性が高く、日常使いにも適しています。
選び方のポイントとしては、サーキットをメインに考える場合はHP4、公道での利用も考慮するならS1000RRを選ぶと良いでしょう。また、予算や維持費も考慮するべき要素です。HP4は限定モデルで中古市場でも高額ですが、S1000RRは価格帯が広く、コストパフォーマンスに優れています。
HP4とS1000RRの系譜と歴史的な位置づけ
HP4とS1000RRの系譜を振り返ると、BMWは2009年にS1000RRをリリースし、これがスポーツバイク市場で革命を起こしました。S1000RRは、当時のスーパーバイク市場で強力なエンジン性能と先進的な電子制御を持ち込み、スポーツバイクのスタンダードを押し上げました。
HP4は、そのS1000RRをベースに、2012年から2014年までの間に限られた期間で製造された特別なモデルです。HP4は、BMW初の電子制御サスペンション「DDC」を採用し、サーキット志向のバイクとして開発されました。さらに、2017年にはカーボンフレームを採用したHP4 RACEが登場し、トラック専用モデルとして非常に限定的に販売されました。
S1000RRは年々進化を続け、特に2015年以降のモデルではシフトカム技術の導入などにより、さらなる性能向上が図られています。HP4は短期間しか製造されなかったため、歴史的には非常に特別な位置づけにあり、コレクターズアイテムとしての価値も高まっています。一方で、S1000RRは進化を続けるBMWの主力スポーツバイクであり、現代のライダーに適したバイクとして今も多くの支持を集めています。
HP4とS1000RR、何が一番違うのか?
BMW HP4とS1000RRの最大の違いは、その設計コンセプトと使用目的にあります。HP4は、S1000RRをベースにしながらも、主にサーキット走行を目的として開発されたモデルです。特に注目すべき点は、HP4に標準装備されている「ダイナミック・ダンピング・コントロール(DDC)」という電子制御サスペンションです。DDCは、走行中に自動でサスペンションの硬さを調整し、あらゆる路面状況で最適な性能を発揮します。このサスペンション技術が、HP4のハンドリング性能を大きく向上させ、特にサーキットでのアグレッシブなライディングに対応できる点がS1000RRとは異なります。
また、HP4は軽量化されたフレームや鍛造ホイールなど、トラック向けに最適化されたパーツが装備されているため、S1000RRに比べて総重量が約5kg軽くなっています。この軽量化は、特にコーナリングや加速時に大きな違いを生み出し、サーキットでのラップタイム向上に寄与します。
一方で、S1000RRは公道走行を含めたオールラウンドな使用に適しており、価格や装備面でもバランスが取れています。最新のS1000RRでは、シフトカム技術が導入され、エンジンの効率やトルクも向上しており、トラックだけでなく街乗りにも対応できる設計になっています。
結論として、HP4とS1000RRの一番の違いは「トラック特化型の性能(HP4)か、公道を含む汎用性の高いバイク(S1000RR)か」という点にあります。